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肖像画


先月、近所のギャラリーで一風変わった個展がひらかれていました。
画家である沼田浩一氏によるパフォーマンスは、
一ヶ月間に100人の肖像画を描く、というものでした。
しかも色彩はさまざまな青色です。
画廊の入り口に、お時間の或る方、どうぞ顔を描かせてください。
とかかれています。

好奇心の強い次男が「ぼくかおをかいてもらった!」と、
言うので彼に案内されるままに画廊を訪れてびっくり。
力強い次男が紙の中から青い目でにらみ返していました。

命ある動くものを一枚の紙に捉える、というのは、こういうことなのかと、
胸を突かれるほどの衝撃を受けました。
一瞬の表情を逃がさず、白い紙の上に書き写す作業に、どれほどの集中力があるのか。
親でさえ知らぬ、子供の内側に隠された力強い表情に呆然としてしまいました。

「こんな顔はみたことありません、しかし、たしかに息子の顔です」

戸惑いながら無知をさらす私に対し沼田氏は
「リラックスして楽しんで描きました」と笑顔でさらり。

いや、実にいい男だった。
惚れました。

私は目の前でなにかを作り出すことのできる人間を心底尊敬している。
コックさんしかり、理容師しかり。
左官屋さんや大工さんなんて大好きで仕方がない。
彼らが作業をしていると、必ず立ち止まって見惚れてしまう。

そして、このたび、初めて画家、という方が絵を描く場面に立ち会わせていただいて、
その壮麗な芸術ぶりに、すっかり心を奪われてしまいました。

その肖像画を描いてもらってから3週間。
個展が終わりました、との礼状とともに、次男の肖像画が本日届けられました。

改めて家でじっくり眺めてみると、頼もしいまでの生命力を感じる
はればれしい絵であることがわかりました。

その頼もしさは果たして次男のものなのか、沼田氏のものなのかはわかりません。

いまどきの言葉でいうなら、まさにこれは彼ら二人の「コラボレーション」、共演です。
力強い息子を描き出した沼田氏のさわやかな笑顔が大変印象的でした。


Posted: 火 - 12月 7, 2004 at 07:22 午後        


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