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映画の半券


打合せ前に顔の油でも取っておこうと化粧室で小さなポケットのジッパーを開けると
中から映画の半券がでてきました。


あ、なんだ、これは? と手に取れば、昨年4月に見に行った「スパニッシュ・アパートメント」です。

わーーーー嬉しい! こんなものが出てくるなんて幸先いいぞぉ。
手に取りしげしげ眺めているとその時の状況がくっきり目の前に浮かんできます。

この日はなぜか夫と家を出る時間が一緒だった、とか、その日の夜にフランス映画好きの友人と長電話したこと、映画館の前に行列ができていて驚いたこと、そしてシートに着席したときの高揚感と見終わった後の満足感。

この作品を見た翌日、
私はロマン・デュリスのファンサイトを立ち上げようと思い立ち、
今に至っているのであります。

映画の半券というのはおかしなもので、もぎり担当から返された後の行き場は手のひら以外にありません。
ポケットへ入れてしまうか、バッグに入れる、くらいの選択肢です。

すぐ脇にゴミ箱があるわけではありませんし、劇場への再入場などで提示する場合があるので、
その場で処分するわけにはいきません。

ですからあんなに小さな紙切れなのに、
意外とハンドバッグの小さなポケットから顔を出すことが多かったりするのです。

先日もフィリップ・リオレ監督の「マドモワゼル」の半券が、
眼鏡ケースの眼鏡拭きの間からぽろっと出てきて嬉しくなったばかり。
この映画も小粒ながら心に残るステキな作品でした。
「ああ、こんな出会いがしたいわあ」と狂おしい気持ちでル・シネマのエレベーターに乗り込んだのを
不意に思い出してひとり照れ笑い。

小さな紙切れだけど、こういう再開の仕方をするとどうも再入場の必要が無くなった現在においても、
無下にぽいっなんて捨てられません。
しばし眺めて映画にまつわる感情とそのときの思い出をたぐり寄せ、気持ちの中でしみじみゆっくり楽しみます。

にやにやしたり、溜息ついたりしながら、ようやく現実に戻るとき、
「うふふ」なんて含み笑いをしながらまたしてもバッグのポケットに戻しちゃったりするものだから、
いつまでたってもこの小さな半券たちは私の人生から消えることなく、つぎつぎに数を増やしながらこっそり隠れて
再開の時をひっそり待っていたりするのです。


Posted: 水 - 6月 29, 2005 at 04:43 午後        


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