おつな寿司
六本木にある「おつな寿司」のおいなりさん。「うらがえしのおあげ」で有名なあれです。江戸時代から伝わるエドのファーストフードのおいなりさん。土地によって、味付けが異なって、大変味わい深いこの軽食を私は心から愛しているのです。
ときどきふと食べたくなるのは、やはり、小さな頃からすり込まれている「おつな寿司」のお稲荷さん。で、今も突然食べたくなって、こっそり買いに行こうかな。なんて迷ってるンですけど、いい大人ですから実際にイスから立ち上がったりは致しません。明日は友人たちと寿司をつまみに行く約束があって、さきほどもメンバーのひとりと電話で話していたので、頭の中がすっかり寿司寿司モードになってしまった様子。しかし、寿司屋でなかなか扱わない「おいなりさん」。明日行く店にはもちろん、そんな軽食はおいてません。ですから、明日になっても「ああ、食べたいな」というこのささやかな欲望は満たされないのです。同じ酢飯なのに、その姿が見えないだけで、「軽食」扱いされるお稲荷さん。その見た目と味付けが、女子供も連想させるためか、どうも同じ板場で扱われることが少ないようです。私が思うに、お稲荷さん、というのはお祝いの席に用意されるちらし寿司やばら寿司の支度の合間に、台所で立ち働く女達が仕事の手を休めることなく食べられるもの、というのであみだされた、まかない飯だったのではないでしょうか。ちらし寿司の用意に忙しい台所にあるものは、酢飯とそれにまぜる味付け済みの具いろいろ。中でも野菜とは別に煮付けるおあげの甘いにおいと、油の香ばしいしつこさは、女性の好むところです。それにこれ、つめちゃおうよ、なんて言い出したせっかちな女がいたはずです。そして、それが評判になって、厨房から飛び出して、まず女の近くにいる小さな子供達へ広がったんじゃないか。お稲荷さんはそうやって時間をかけて市民権を獲得し、今に至るというわけです。「おつな寿司、何時まであいてたかな?」空きすぎた腹の虫の催促で、我に返ると11時。どう考えても、やはりお稲荷さんを食べる時間ではないようです。
Posted: 金 - 2月 18, 2005 at 11:10 午後